事例1
「うちのSは、算数と理科は大手進学塾の公開学力テストで常に上位にいるのですが、国語の偏差値が55から65の間を乱高下して安定しません……」と保護者様からご相談いただきました。
Sくんは、公開学力テストで算数と理科は常に成績優秀者10名のなかに掲載されるものの、国語の偏差値は良いときは65超え、悪いときは55前後とのこと。結果として、国語の調子が良いときの灘中の合格判定は「A判定」、しかし、国語の調子が悪いときの判定は「C判定」という状態でした。
IQ/群指数 | 記述的分類 | |
---|---|---|
全検査IQ | 141 | 非常に高い |
言語理解(VCI) | 115 | 平均の上 |
知覚推理(PR) | 129 | 高い |
ワーキングメモリ(WMI) | 144 | 非常に高い |
処理速度(PSI) | 141 | 非常に高い |
知能検査を行ってみたところ、Sくんは知能指数140越えという最高水準の知的水準と推測されました。ただ、ほかの指標と比べて言語理解能力が低いことがわかりました。
聞いた情報を短期的に記憶することやその情報を処理することが得意なSくん。目で見た情報を記憶にして作業に生かす、つまり数多くの情報を正確に迅速に処理する能力はトップレベルです。
ただ、言語において本質をとらえることは苦手のようです。知っている単語量、持っている知識量は豊富なのですが、それを実際に活用することに難しさを感じることがあるようです。
当相談所からの「受験対策&学習プラン」として、大手進学塾の国語とは別に「自分の言葉で説明する訓練」を提案しました。具体的には、日記や作文を習慣的に書くこと、今日の出来事をご両親に要領よく伝えること、短めの論説文を読むことなどです。
6年生の直前期には苦手の国語の成績もアップし、第一志望校である灘中に合格されるだけでなく、東大寺学園、西大和学園も難なく合格されました。
事例2
「うちの娘・Rは、算数がまったくダメなんです。低学年のときは、塾の公開学力テストは決して悪くなかったのですが……」と、保護者様からご相談いただきました。
大手進学塾に通うだけでなく、算数のための家庭教師をつけるなど、さまざまな対応をしたものの、高学年になって公開学力テストの成績、特に算数の成績はずっと下降ぎみ。Rさんは決してやる気がないわけではなく、むしろ保護者から見ると一生懸命に算数に取り組んでいるとのことです。
IQ/群指数 | 記述的分類 | |
---|---|---|
全検査IQ | 123 | 高い |
言語理解(VCI) | 103 | 平均 |
知覚推理(PR) | 118 | 平均の上 |
ワーキングメモリ(WMI) | 112 | 平均の上 |
処理速度(PSI) | 127 | 高い |
知能検査を行ってみたところ、処理速度がずば抜けて速く、知覚推理能力と記憶力も高く、言語理解能力が(平均値よりも十分高いのですが)4つの能力のなかでは一番低いという結果が出ました。
おそらく知覚的に算数の問題を認識し、処理速度の速さで算数の問題をこなしていたと考えられます。ただ、このような解き方が通じるのは小学校の低学年までで、高学年、特に難関中学受験レベルになると太刀打ちできなくなります。
こうしたケースでは、定義や公式をきっちりと覚えて、少数の良問を繰り返し学習するとともに、問題をじっくりと読み、出題者の意図をも考える学習スタイルが必要となります。
当相談所からは、「逆説的ですが、算数対策のために国語、特に読解対策に力を入れましょう。国語力が上がれば、それに引きずられて算数も成績が伸びます」とご提案。そして家庭教師に対して、解くべき算数の問題数を減らすとともに別解や出題者の意図、さらには類題を大切にすることをリクエストするとともに、大学生の教養課程で使うクリティカルシンキングの本をオススメしました。
家庭教師との連携で算数の補強を行いつつ、毎日10分から15分、クリティカルシンキングの本で、親子で国語の論理を学んでいただいた結果、すぐに算数の成績が上昇に転じました。
事例3
「うちのHは、記憶力が悪いようで、社会の暗記物が苦手なんです」と、保護者様からご相談いただきました。
このHくん、実は将棋アマチュア四段の腕前だそうです。しかし保護者様によると、同じ将棋四段のライバルが9手詰めや11手詰めという詰め将棋をスラスラと解いているのに対して、Hくんは簡単な5手詰めを解くのが精いっぱいとのこと。どうやら苦手なのは、社会だけではないようです。
IQ/群指数 | 記述的分類 | |
---|---|---|
全検査IQ | 128 | 高い |
言語理解(VCI) | 108 | 平均 |
知覚推理(PR) | 127 | 高い |
ワーキングメモリ(WMI) | 130 | 高い |
処理速度(PSI) | 120 | 平均の上 |
知能検査を行ってみたところ、Hくんは記憶力が良く、言語理解能力よりも知覚推理能力が優れていることがわかりました。
こうしたタイプは、記憶を文字でなくビジュアルで行います。
当相談所からのアドバイスとして、社会の勉強法を「テキスト中心の資料を読む」ものから、「写真がたくさん載った資料を見る」ものへと変更してもらいました。
写真や図説などからポイントを視覚的に捉え、そのあとに一問一答形式の問題集で知識の定着をはかることに。もともと記憶力の良いHくんなので、このやり方で覚えた知識の定着は目を見張るものがありました。
また、将棋の指導者の方には「Hくんには詰将棋の問題をビジュアルで見せて、頭に問題を記憶してもらいます。そして目をつぶって(将棋盤を使わずに)頭の中で詰将棋を解かせてみてください」とアドバイスしました。このやり方に変えた瞬間、9手詰めどころか11手詰めの問題もサクサク解き始めたそうです。